母親塾

プロフィール紹介

子育てはエンドレス。 人生の終焉まで、 母親と子どもの関係は続く。

子育てはエンドレス。 人生の終焉まで、 母親と子どもの関係は続く。

<Profile>
1956年東京都生まれ。東京歯科大卒業後、同大学保存科勤務を経て宝田歯科の三代目院長に就任。患者の自然治癒力を高めるための歯科治療に力を入れる。口元の筋肉を中心に表情筋を鍛える、くちびるエクササイズを従来の歯科治療に取り入れ注目を集める。患者さんとの対話を重んじ、義理と人情を大切にする江戸っ子らしさで信頼も厚い。長女・長男はすでに独立している。

「仕事をしているお母さんより、専業で子育てをしているお母さんのほうが大変だと思う」

凛とした空気を漂わせながら、ひと言、言葉を発すると義理人情に厚い江戸っ子らしい温かな雰囲気に包まれる。主人の実家である宝田歯科を継ぎ、歯科医師をしながら、女性の生き方にまつわる分野で幅広く活躍される宝田恭子さん。娘さんにはすでにお子さんがあり、息子さんも独立している。
二人がまだ小さいうちは、仕事をしても子育てがうまくいくよう時間の使い方がかなり意識していた。
 
「いつ言うかなって思ってたんですが、最近になって娘が『仕事しているほうが子育てしているより楽よね』って言うようになって…。まったく私も同じように思ってたんです(笑)。働きながら子育てしているお母さんのほうが専業育児をしているお母さんより大変だと思われがちですが、私、本当は反対だと思うんです。大学病院に勤務していたころは女性医師が少なく、仕事上、私の代わりもいない。そんな中、トイレで搾乳したりと本当に大変でした。でも、仕事は自分で選んでしているんですよね。たとえ金銭的な事情があるにしろ、仕事をしていると達成感も得られます。その達成感がいつピークにくるか予測もできるでしょ? でも子育ては違うんですよね。子どもの成長をずっと見ていられるのは楽しいけれど、その楽しみも苦しみもいつやってくるかわからない。予測ができないことの連続だからこそ、専業でやっていると苦しいんです」

確かに仕事をしていると、育児を保育園や自分の母親に任せることができるし、その分、気持ちが楽になることがある。「好きな仕事をさせてもらっている、子育てを他の人に任せて仕事をさせてもらっているという気持ちを持つことが大切。そうすると自分もラクになるんです」と、宝田さんは言う。
子育てはエンドレス。 人生の終焉まで、 母親と子どもの関係は続く。

「お母さんには誰でもなれる。100点のお母さんは、どんなお母さんか考えなければなれない」

仕事を持っていると、職場で嫌なことがあったり、ハードワークが続いたりして、つい「疲れた」とこぼしてしまいそうになることがある。そんなときも、子どもの前では絶対に仕事で「疲れた」なんて言葉を出さないこと。それを言ったら自分を0点の母親だと思ってほしいと宝田さんは言う。

「もし子どもに『ママは仕事で疲れてるの』『疲れてるから後にして』なんて言ったとします。すると子どもは無意識のうちに、『お母さんが大変な中、私、僕を育ててくれた。子育てがお母さんの仕事をもっと大変にしている。私の存在は邪魔なのかもしれない・・・』というふうに思ってしまいます。そうです。自分の存在価値自体が揺らぎ始めてしまう。そんなふうにさせないためにも、子どもの前で『もう一丁、がんばるか!』と自分を励まし奮い立たせてほしい。何時間もがんばる必要はないんです。ほんの30分でも、その時間をまるごと100%子どものために気持ちを向けるだけでいいんです。疲れたと思わず言いそうになるときは、別の部屋に行って30秒だけ子どもと離れるのも手。いつも自分が選んで仕事をしていることを忘れない。それだけで、子どもの未来が変わってきます」

それは専業で育児をしている人も同じだそう。例えば公園で遊んでいて、お母さんは「もう帰りたい」、でも子どもは「まだ遊びたい」。そんなときはあと30分だけ付き合う。そのがまん、つまり子どものための時間を持つこと、瞬間に「子どもにとって今、100点のママはどんなママか」を考えることで自分をコントロールしやすくなると宝田さんは言う。
「もちろん常に100点なんてムリです。でも、子どもは何も言わないけれど、つねに母親の愛情がどのくらい自分に向けられているか判断しています。母親がどれくらい子どものことを考えたかは伝わります。子どもがどれくらい満足しているか、自分が何点をつけられたかは、その日の夜、子どもの寝顔が教えてくれますよね」

「親子で自然に『ありがとう』を言える、自然にほめて育てられる環境をつくるのも母の役割」

子育てをしていてつい子どもにはあれはダメ、これはダメと否定的なことを言いがちに。するとなかなか、普段の生活の中でほめることが少なくなってしまう。家庭として禁止するところもきちんとつくり、それとは別に子どもをほめることも躾として子どもが小さいうちに身につけさせておくことも大切だと、宝田さんは子育てをしながら気づいたそうだ。

「娘も息子も昔から、スーパーで買い物をしたときに何も言わずに荷物をすっと持ってくれます。すごくうれしかったですね。そんなときは「ありがとう」と心から言えます。これは私にだけでなく、重たそうな荷物を持っている人を見かけると「持ちます」と言って、誰にでも自然に手を差しのべるんですね。これは、私の実家ではなく宝田家が、主人がそういうふうに義母にしつけられてきたからなんだって、気がついたんです。私はとくに意識してそのように子どもをしつけたつもりはないのですが、主人が私や義母の荷物を当たり前のように持つのを見て、子どもたちも自然にそうするようになりました。もし同じように重たそうな荷物を持つ人を手助けしたいと思っても、「持ちましょうか?」と声を掛けてしまうと、「大丈夫です。いいですよ」と言われてしまう。だから何も言わずに、もしくは「持ちます」と声をかけて体を先に動かすことが大切なんです」

娘さんや息子さんのそうした他人への気遣いについて、後から近所の方に「うれしかった」と言われることがあったという。子どもたちにとっては当たり前のことをしたまでなので、何も言わない。他人から喜びを聞いて、それをほめることができます。宝田家のしつけで、いいところだと宝田さんは言う。
「これは誰にでもできる素敵なしつけです。何でもいいのです。こうして自然に親子で『ありがとう』を言い合えるようなことがあると、同じことが他人にも自然にできる。そしてひとつ自然にほめられることができます。難しいことですが親が見本となって自然にほめられる環境をつくっていくことも、子育てには必要ではないでしょうか」
家族という小さいユニットで、こういう人間関係を築いていくことが、社会という大きな世界でも役立っていく。

「人生の先輩に教わること、救われることがたくさんある。一つでも年上の人のアドバイスはしっかり胸で受け止めて」

かくいう宝田さんも、他のお母さんたちと同じように、子育てにつまずいたことが何度もあるそう。そんなときに宝田さんのよきアドバイザーになってくださったのは、当時40代・50代の先輩ママの患者さんたちだった。

 「子どもが反抗期で、親の言うことを聞き入れない。そんな状況ってどこの家庭でもありますよね。そんなとき私は、歯科に通院する人生の先輩である患者さんに相談していました。職権乱用ですね(笑)。本当に素敵な女性がたくさんいらっしゃいました。だから何げない会話の中でふと聞いてしまうんです。そこで彼女たちに教わったのが、『相手が変わるのをずっと待つ。人として生き方として悩み、ソンだと気づくのは本人自身。子どもはバカじゃないから、気づくときが必ず来る。だから安心して子育てしなさい』ということでした。当時も今も、患者さんの中に、賢いお母さん、真似したいお母さんがたくさんいらっしゃいます。そして今、悩んでいるお母さんに私の実感として言えることは、一つでも年上の人の意見やアドバイスは大切にしてほしいということです」

お母さんとしての技量を積み重ねるためにアンテナを張ってきた宝田さんのまわりには、今、憧れの先輩とも言える70代・80代のカッコいいお母さん、女性がたくさんいらっしゃるそう。彼女たちは、人生の3つの苦しみといわれる、お金、健康、人間関係と上手に向き合い生きてきた女性だと感じると言う。
「まだまだ55歳・56歳って捨てたもんじゃないわよって思います。ずっと人の役に立つように仕事をしていきたいですね。そのためにも、気っ風のいい女性でいたいですね。自分のためだけでなく相手のために何かできる人になる。そのためには、お金・病気・人間関係の人生の三十苦を自分でコントロールして、他人のために使えるお金、体、そしてその気持ちを心地よく受け入れてもらえる人間関係をつくっておくことが大切なんじゃないかしら」

それは他人との関わりだけでなく、親子の関係でも同じかもしれない。
「娘に『今でもいちばん頼りになるのはお母さん』なんて言われると、『よしっ!』ってがんばっちゃう。「子育てを卒業しました」なんておっしゃる方もいらっしゃいますが、親子の関係に終わりはありません。子どもが大人になっても親になっても、子どもとの関係は人生が終わるまで続いていくものです。子どもたちにとって、私はいくつになっても母親ですし、子どもたちがどんなに大人になっても私の子どもです。ずっと関係し合って生きていくもの。そう、子育てはエンドレスです(笑)」

ママリブ会員 受講を終えて・・・

宝田さんを取材させていただいたのは、彼女の知り合いが経営する喫茶店。そこで宝田さんはウェイトレスをされていました。医師としての顔をしていては絶対に気づけないようなことを、休診の日にウェイトレスになって学んでいるということでした。お聞きしたお話は子育てだけでなく、友達との付き合い方、自分の見せ方、お金の扱い方など、すぐにでも真似したくなる具体的な方法をアドバイスしていただきました。ここでご紹介しきれないのが残念であり、正直に言うと誰にも教えたくない気持ちもあったり(笑)。母親としてはもちろん、女性としてこうありたいという理想をそのまま生きてらっしゃる宝田さんの姿を拝見し、年齢を重ねることがまたひとつ楽しみになりました。ありがとうございました。

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